JALグループ、事業横断で実現する顧客体験の革新  ~デジタルチャネルで一貫した体験価値の向上へ~

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日本航空株式会社 様

日本航空株式会社(以下、JAL)は、「世界で一番選ばれ、愛されるエアライングループ」となることを目指し、ESG戦略を軸とする「2021-2025年度JALグループ中期経営計画」を全社員一丸となって遂行しています。 今回は、CX本部 顧客チャネル企画部 デジタルCX戦略グループ グループ長の下川朋美氏と、株式会社ジャルパックCX推進部 CX戦略グループ グループ長の早川勝博氏に、デジタルチャネルを通じたCX向上の取り組みについて詳しく伺いました。

イメージ:JALグループ、事業横断で実現する顧客体験の革新

世界で一番選ばれ、愛されるエアライングループ

――JALグループのビジョンと、それに基づくCX向上の取り組みについて教えてください。

下川氏:JALグループでは、「世界で一番選ばれ、愛されるエアライングループ」となることを目指し、この実現に向けて、ESG戦略を軸とする「2021-2025年度JALグループ中期経営計画」を、全社員一丸となって遂行しています。

その一つとして、事業収益向上に加え、あらゆるシーンでお客さまの期待を超える価値を提供することを目標に、顧客体験価値の向上(CX向上)に注力しています。

例えば、航空の基本品質の維持向上に加え、日常生活での充実した体験をお届けするなど、多様なお客さまの価値観に合わせ、事業を横断したさまざまな取り組みを実施しています。

日本航空株式会社 CX本部 顧客チャネル企画部 デジタルCX戦略グループ グループ長 下川 朋美氏

日本航空株式会社 CX本部 顧客チャネル企画部 デジタルCX戦略グループ グループ長下川 朋美氏

早川氏:この中期経営計画はJALグループの各事業会社にも展開されており、例えばジャルパックでは全社員への説明会を通じて、お客さまのCX最大化に向けた具体的な実行プランを策定し、推進しています。

2021-2025年度JALグループ中期経営計画

2021-2025年度JALグループ中期経営計画

事業横断でのCX価値向上

――CX本部としての取り組みについて教えてください。

下川氏:これまでのCX向上の取り組みは各領域や部門で分断されており、お客さまの体験としての一貫性が不足していました。そこでCX本部が2021年4月に発足し、事業を横断して顧客体験の向上に取り組んでいます。

当社グループの特徴の一つとして、運航乗務員・整備士・客室乗務員・グランドスタッフなどの各専門性を持った部門がそれぞれプロフェッショナルな業務を推進しているという点があります。「最高のバトンタッチ」という言葉に表されるように、各専門分野の連携によって高品質なサービスを提供してきました。それに対し、CX本部では、共通の顧客理解のもと、事業を横断して顧客価値のあるCXを提供することを目的に活動しています。

CX本部の中で「顧客チャネル企画部」はデジタル領域のCX体験強化をミッションとしています。具体的な取り組みは主に7つの領域に分かれています。

1つ目は「安心・シンプルな予約体験の提供」です。航空券の予約からチェックインまでの一連のプロセスを、できる限りシンプルで分かりやすいものにすることを目指しています。

2つ目は「旅中(たびなか)のデジタル体験強化」です。例えば、オンラインチェックインの機能強化や、従来は空港の係員でしかできなかった当日のアップグレードリクエストを、お客さまご自身のスマートフォンから可能にするなど、デジタル化を進めています。

3つ目は「顧客フィードバックの即時活用」です。お客さまの声をリアルタイムに収集し、迅速にサービス改善に活かす体制を構築しています。

4つ目は「シンプルでシームレスなサポート」で、デジタルとヒューマンの両面からお客さまをサポートする体制の整備を行っています。

5つ目は「イレギュラー時の『一歩先行く』対応」です。天候の影響による遅延や欠航など、イレギュラーな状況が発生した際に、従来は空港やコールセンターでの対応が中心でしたが、お客さま自身がデジタルで対応できる範囲を広げています。例えばメールでの案内や予約管理画面からの変更受付など、24時間いつでもご自身のタイミングで手続きが可能となり、お客さまの利便性が向上しています。

6つ目は「デジタルの基本品質維持向上」です。サイトの安定稼働やレスポンス改善など、デジタルサービスの基盤強化を進めています。例えば、大規模セールの際の待合室システムを導入し、サイトの安定性を高めています。

7つ目は「ユニバーサルなCXの実現」です。国内外のお客さま、年齢や言語を問わず、誰もが使いやすいサービスの提供を目指しています。特に近年は、インバウンドのお客さまの増加を踏まえ、多言語対応の強化にも注力しています。

顧客チャネル企画部の主な取り組み

顧客チャネル企画部の主な取り組み

デジタルチャネルでの顧客体験向上の課題

――デジタルチャネルにおける具体的な取り組みについて教えてください。

下川氏:当社グループでは、Webサイトの利用や航空券の購入体験に関するお客さまの声を収集する手段として、これまでは搭乗後のメールアンケートといった、定性的な評価が中心でした。しかし搭乗後ではWebサイトで予約を行った体験から時間があいていることもあり、デジタル体験の正確なフィードバックを得られていない感覚がありました。そこで、定性的な評価に加え、お客さまのサイト行動データなどを分析することで、課題のあるWebページや機能を特定しています。そして、日々UI/UX向上のための改善を進めています。

他にもチャットボットやFAQの機能・精度の向上、Webサイト制作者のUI/UXスキルの向上と共通ガイドラインの策定、お客さまのサイトの行動に合わせた的確な情報提供を進めています。

――具体的にはどのような課題に直面されていましたか?

下川氏:スピード感をもったデジタルチャネルの機能強化と、サイトを訪問したお客さまのニーズに合わせた顧客体験の実現に向けて、主に3つの課題がありました。

1つ目は、Webサイトの情報過多や複雑性です。航空券の運賃や購入方法、搭乗ルールは多岐にわたり、お客さまには理解しづらいと感じています。ツアー予約も、商品説明ページの情報量が多く、発売情報が伝わりにくいという課題がありました。

2つ目は、システム改修に要する時間と労力です。Webサイトの改修には半年から1年程度かかることも珍しくなく、スピーディーな対応が困難でした。特に予約に関わるシステム改修では、安全性の担保や他システムへの影響確認など、さまざまなステップが必要となります。そのため、お客さまからのご要望にタイムリーに対応できない状況が続いていました。

3つ目は、コロナ収束に伴うインバウンドや旅に不慣れな方のサイト訪問者数の急増です。

そこで、お客さまの声とデジタル上での行動を包括的に分析し、施策の優先順位付けや課題の特定、お客さまのサイト上の行動に合わせて的確な情報提供することを目的に、CX改善ツールの導入を検討しました。

デジタルチャネルでの顧客体験向上の課題

デジタルチャネルでの顧客体験向上の課題

課題を解決するためのCXパートナー選定と評価

――課題解決に向けて、どのようにパートナー選定を進められましたか?

下川氏:デジタル顧客体験向上のためのツール導入にあたり、段階的な選定プロセスを実施しました。まず複数社からの一般的なご提案をいただいた後、その中から2社にお付き合いいただき、実際のツールを利用した導入検討のためのPoCを実施しました。PoCではツールの機能や利用方法の確認に加え、3つの重点評価ポイントでの検証を行いました。

さらに今回は、過去にツールの乗り換えを行った(=2つのツールの利用実績のある)企業さまをそれぞれご紹介いただき、実際に話を聞くリファラル評価を実施しました。これは当社が「最高水準の顧客体験価値」にかける本気度を示すものでした。

――3つの重点評価ポイントとその評価について、教えてください。

下川氏:1つ目は「As JAL」、つまり当社と同じ立場・目線で施策の検討から実施までお付き合いいただけるかということです。その点において、Sprocketは当社の状況やサイトの構成を迅速に把握し、新たな視点や角度での分析を行ってくださいました。また常にお客さま目線で、分かりにくい言葉や表現への率直な意見もご提案いただきました。

2つ目は施策の検討から実施までの「スピード感」です。Sprocketの評価として、施策の相談から数時間で具体的な提案とプレビューが提示され、通常のシステム改修では数週間以上かかる対応も短期間で実現できることが確認されました。

3つ目は「ご提案の質」です。お客さま視点に立った提案や当社が求める運用に合致しているかということです。その観点でSprocketは、他社事例の効果分析や専門的知見に基づく提案、行動履歴データに基づいたセグメント化の提案など、専門性の高い提案内容が評価されました。また単に「AかBか」という選択肢の提示にとどまらず、当社の課題に対してより適切な第三の選択肢を提案するなど、新たな視点からのアプローチが示されました。

3つのポイントに対する関係者の評価とリファラル評価を総合的に考慮した結果、特にカスタマーサクセスのメンバーや営業の皆さまのスキル・モチベーションの高さが決め手となり、Sprocketの採用を決定しました。

課題を解決するためのCXパートナー選定

課題を解決するためのCXパートナー選定

デジタル顧客体験の具体的な施策

――本導入後、具体的にどのようなロードマップで進められましたか?

下川氏:「航空券予約」と「国内・海外ツアー」「JAL Mall」「JALカード」などの領域において、主に「(1)各サイト上でつまずきやすいポイントを改善し、UI/UXを向上させる」「(2)お客さまの声を収集/分析、フィードバックし、デジタルのUI/UX改善に繋げる」「(3)チャネルを横断した顧客体験向上施策を実施し、次も利用したいと思っていただけるお客さまを増やす」を目的にツールを導入しています。

デジタルチャネル顧客体験の向上ロードマップ

デジタルチャネル顧客体験の向上ロードマップ

今回はその中でも、「(1)各サイト上でつまずきやすいポイントを改善し、UI/UXを向上させる」について、「国内・海外ツアー」と「航空券予約」の施策をご紹介します。

国内・海外ツアーでの施策

――特に印象的だった施策などをお聞かせください。

早川氏:国内・海外ツアーにおける最初の課題は、予約システムの制約によって顧客体験が低下していることでした。例えば、東京ディズニーリゾート®のツアー商品では、約2ヶ月先の入園日までを発売していましたが、商品説明ページの情報量が多いため発売情報が伝わりにくく、未発売の日にちで検索してエラーとなるお客さまからコンタクトセンターへのお問い合わせも多数発生していました。

予約システムの改修は時間・費用面で直ぐにはできない状況であったことから、Sprocketにより旅行出発日やホテルなどの条件を指定する箇所で発売日情報のメッセージを案内し、検索エラーを低減させることを目指しました。

株式会社ジャルパック CX推進部 CX戦略グループ グループ長 早川 勝博氏

株式会社ジャルパック CX推進部 CX戦略グループ グループ長 早川 勝博氏

早川氏:また、ツアーのご予約と同時にお申し込みの場合のみご利用いただける特典プランや、利用店舗の指定を間違えやすいレンタカープラン、操作が分かりにくいデジタルパンフレットからのツアー申し込み方法など、コンタクトセンターによくお問い合わせをいただく内容について、特に注意してもらいたい点や理解してもらいたい点を案内しました。

Sprocketコンサルタント佐藤:Sprocketでは「Webサイト上での最適な情報提供による顧客体験の向上」を目指し、状況に応じた多角的な分析と施策設計で取り組みました。具体的にはJAL様からいただいた課題に対し、ヒューリスティックな観点からWebサイト上の潜在的なつまずきポイントを特定しました。必要に応じてヒートマップ分析なども実施し、「どの場所で」「どのタイミングで」「どのようなお客さまに」情報を提供すべきかを詳細に設計しました。

特に重視したのは、単なるお問い合わせ削減ではなく、サイト流入から目的達成までの一連のカスタマージャーニーを考慮した設計を行うことです。例えば、東京ディズニーリゾートツアーの発売日情報は、お客さまの検索行動を妨げないタイミングで表示するなど、体験を最適化することを意識しました。

さらに、施策実施後もお客さまの反応を継続的に分析しました。得られた示唆はJAL様と共有し、他の施策へも展開するなど、PDCAサイクルを通じて継続的な改善を実現しました。このように、顧客体験の向上とビジネス課題の解決を両立する施策を実現することができました。

Sprocketコンサルタント 佐藤 未里

Sprocketコンサルタント 佐藤 未里

迷いがちな申し込み導線における操作改善&サポート

迷いがちな申し込み導線における操作改善&サポート

重要かつ見落としがちな情報の認知・注意喚起

重要かつ見落としがちな情報の認知・注意喚起

航空券予約での施策

――特に印象的だった施策などをお聞かせください。

下川氏:航空券予約では、サイト上でのお客さまの行動分析に重点を置きました。これまでWebサイトでお客さまの声の収集を行っていましたが、定性的な評価の積み上げだけでは施策の立案に限界を感じていました。

具体的には、コンタクトセンターの入電状況やアンケート調査から得た声について、生成AIを活用してヒートマップ、可視化を試みました。また、N1分析の手法でお客さまのサイト内行動を分析し、つまずきポイントを特定しています。これにより、漠然としていた課題がより明確になり、今まで担当者が気づかなかった視点で課題の関連性が見いだせるようになりました。

生成AIを活用したお問い合わせ状況の可視化

生成AIを活用したお問い合わせ状況の可視化

サイト/お客さま行動分析

サイト/お客さま行動分析

SprocketがCX向上に必要不可欠

――取り組みの成果やSprocketの評価はいかがでしょうか?

早川氏:国内・海外ツアーでは、Sprocketで案内した特典プランの申込改善率が最大58%改善したり、施策を実施した課題に関するコンタクトセンターへのお問い合わせが減少するなど、具体的な成果が表れています。特に、夜間などコンタクトセンターの営業時間外でも即時に問題を解決できる機会が増え、顧客体験が大きく向上しています。

また、社内でも高く評価されており、さまざまな部署から新たな施策の相談が寄せられるようになりました。社内でSprocketがCX向上に必要不可欠なツールとして定着していることを実感しています。

下川氏:システム改修と比較して、Sprocketは圧倒的なコスト削減と迅速な対応を実現しています。従来、予約や発券などのシステム関連ページの改修には、ITチームやエンジニアへの依頼が必要で、実装までに数か月を要していました。

しかし、Sprocketを活用することで、エンジニアリソースに依存せず、要件定義から実装までを1~2週間程度で完了することが可能となりました。

またSprocketのカスタマーサクセスの皆さまは、ツアー商品の特性から予約システムの仕様、JALの状況やサイト構成、さらにはお客さまの課題に至るまで、幅広い理解力の高さを発揮してくださっています。この業務理解の早さと、それに基づくシナリオ作成のスピード感により、PDCAサイクルを多く回すことができ、当社の課題解決に大きく寄与しています。

今後の展望

――今後の展望を教えてください。

下川氏:当社では、デジタルチャネルのさらなる進化に向けた取り組みを推進しています。現在は日本国内のサイトのみでSprocketを活用していますが、今後はグローバル展開も視野に入れています。多言語対応や海外の法令準拠を充実させていただくことで、インバウンドサイトへの導入も検討したいと考えています。

また、当社グループのサービスは多岐にわたりますが、それぞれのチャネルを横断した顧客体験向上施策を実施することで、お客さまに長く利用したいと思っていただける企業になることを目指しています。そのためにはJALカードやJAL Mall、アプリにおいても、会員データや行動データに応じた顧客体験向上の取り組みを進めていきたいと考えています。

早川氏:ジャルパックのコンタクトセンターとしても、お客さまからの声を活かしたデジタル改善の提案ができるようになってきました。今後も、デジタルとヒューマンの両面からお客さまの体験価値向上に取り組んでいきたいと思います。

――最後に、Sprocketの導入を検討している方へ向けてひとことお願いできますか。

下川氏:数年単位で人事ローテーションがある組織において、Webサイトの改善施策を継続的に推進することは大きな課題です。その点、Sprocketは運用・分析・企画提案まで手厚いサポートがあり、限られたリソースでも施策を実現できます。

また、他社事例の効果分析や行動履歴データに基づいた専門的な提案など、専門家の知見を活かすことができます。組織的な制約がある中でWebサイトの体験価値向上を目指す企業にとって、心強いパートナーとなるはずです。

――本日はありがとうございました。

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