リテンションとは?リテンションマーケティングの注意点や具体的手法を解説

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Sprocket編集部

リテンションとは?リテンションマーケティングの注意点や具体的手法を解説

リテンションは「保持・維持」という意味を持ち、人事領域やマーケティング領域で使われる言葉です。この記事ではマーケティングにおける「既存顧客との関係維持」としてのリテンションのメリットや注意点、具体的手法を解説します。

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リテンション(retention)とは

リテンション(retention)とは、英語で「保持」や「維持」という意味の単語です。ビジネスでは、マーケティングと人事、両方の部門で使われる言葉です。マーケティングにおけるリテンションとは「既存顧客との関係維持」のことであり、既存顧客の他社への乗り換えを防いだり、リピート利用してもらうことを指します。

人事におけるリテンションとは「企業の人材維持」や「人材流出を防ぐための施策」を指します。従業員の離職率を減らすことを目的とした、賃金や職場の環境整備のことです。

既存顧客の維持率を表すのが「リテンション率」です。新規顧客がどれくらい継続してサービスを利用しているかを計る値で、アプリやWebサービス事業において重要視されます。

リテンション率は「リテンション率(%)= 継続顧客数 ÷ 新規顧客数 × 100」で算出されます。リテンション率が高いほど、顧客にサービスや商品を気に入ってもらえていることを表します。

リテンションマーケティングとは

リテンションマーケティングとは、既存顧客との関係を維持するためのマーケティング活動全般のことです。

既存顧客への新商品案内メールやポイントサービス、ロイヤルティプログラムやアプリの起動を促すプッシュ通知など、「既存顧客に接触し、商品の再購入やより積極的なサービス利用を促す」施策を指します。

リテンションマーケティングが注目されている理由

リテンションマーケティングが注目されるのは、以下の理由からです。

一般的に、新規顧客を獲得して商品を購入してもらうには、既存顧客の5倍のコストがかかると言われています。既存顧客に対しては、商品の認知度をあげる目的の広告費は必要ありませんし、サービスについての説明も省略できます。これは「1:5の法則」と言われ、同じ商品を同じように売るとするならば、新規顧客より既存顧客のほうがコストがかからず利益率が高くなるのです。

また、日本は少子高齢化が進み市場が縮小傾向にあることから、新規顧客の獲得が難しくなってきています。そのため、新規顧客を獲得して利益をあげるスタイルよりも、既存顧客との関係を強化して1人の顧客からの生涯利益を増やす「LTV重視」の戦略を取る企業が増えています。

マーケティングにおける既存顧客の価値が高まった結果、既存顧客を維持するためのリテンションマーケティングが重要になっているのです。

マーケティングにおいて既存顧客の育成は重要なテーマです。新規顧客をロイヤルカスタマーに育てる方法についてまとめた、保存版の資料を公開中です。そちらもぜひご参照ください。

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リテンションマーケティングの3つのメリット

リテンションマーケティングを行って顧客との関係を維持することで、以下のメリットが期待できます。

「何を目的として顧客維持をするのか」を理解することで、リテンションマーケティングをより有効に活用できるようになります。それぞれの理由と詳細を、以下で確認しましょう。

メリット1:LTVの向上

LTVとは「1人の顧客が、生涯のうちにどれだけの利益をもたらしてくれるか」を表す数字で、以下の計算式で算出できます。

LTV = 平均顧客単価 × 収益率 × 購買頻度 × 継続期間

リテンションマーケティングでは、既存顧客の人数の増加や、顧客として維持できる期間の長期化を目的とします。

一人ひとりの顧客に合わせてアプローチすることで、購入額の増加や購入頻度の上昇も狙えるでしょう。結果として、LTVの向上や収益の安定化が見込まれます。

メリット2:利益率の向上

「リテンションマーケティングが注目されている理由」でも述べたように、新規顧客と比較して既存顧客にかかるコストは低いため、リテンションマーケティングで既存顧客のリピート率が上昇すれば利益率も上昇します。

また、リテンションマーケティングではこまめに顧客に接触します。顧客が企業に親しみを持ってロイヤルティの上昇が起これば、より利益率の高い商品を購入するアップセル、他の商品との合わせ買いであるクロスセルも起こりやすくなるでしょう。

メリット3:顧客の離脱防止と掘り起こし

リテンションマーケティングは、休眠顧客やしばらく取り引きのない顧客に対して自社を思い出してもらい、取り引きを再開してもらう手段としても有効です。休眠顧客は、過去に自社商品を購入しているので、再購入のハードルやコストが低くなります。

目玉商品のクーポンのついたメルマガの配信や、再開記念キャンペーンをきっかけとしてまた顧客として戻ってくるかもしれません。普段から顧客に合わせた接触をすることで、顧客を離脱させない施策にもなります。

リテンションマーケティングの3つの注意点

顧客維持や利益率の向上に有効なリテンションマーケティングですが、やり方を間違えるとかえって顧客離れを招いてしまうことになりかねません。

以上の3点について注意点を解説します。

注意点1:顧客ニーズに沿わない施策をしない

顧客が求めていない施策をしても、顧客の維持や商品の再購入にはつながりません。

「メールを開封するのが手間だな」と思っている顧客にメールマガジンを送付してもほとんど開封されないでしょうし、「この前と違う商品を試してみたい」と思っている顧客に、前回と同じ商品の割引クーポンを送っても効果は期待できません。

顧客ごとに求めるアプローチ方法や商品の分析をし、ニーズを明確にしてから施策を始めましょう。

注意点2:顧客アプローチの頻度に気を配る

顧客に自社やサービスのことを忘れられないようにするには、ある程度の頻度で接触する必要があります。しかし、その頻度が多すぎるとかえって「しつこい」と思われて顧客離れの原因となってしまいます。

メルマガやDMの適切な配信頻度は企業によって異なるので、開封率や反応から適切な配信間隔を探っていきましょう。低単価な商材は頻度を多めに、高単価な商材は比較的頻度を少なくしたほうがよい傾向にあります。

注意点3:SNSの公式アカウントの運用に注意する

SNSの公式アカウントを用いてリテンションマーケティングを行う際は、炎上リスクに十分気をつけましょう。担当者の不用意な発言や不適切な表現で炎上すると、商品の買い控えや企業イメージの悪化が起きてしまいます。

また、企業やブランドのイメージを損なわない投稿を心がけることも大切です。高級感をポイントにしているサービスなのにフランクな言葉遣いの投稿をしてしまうと、見た人が幻滅するかもしれません。

見込み顧客を商品・サービスを購入してくれる状態まで育成する、リピート購入してくれる優良顧客になってもらうまでの一連の活動を「顧客育成」といいます。Webやアプリ上で顧客育成を行っていくためには、顧客体験の向上が欠かせません。消費者1,000人を対象としたアンケート調査の結果から、Webサイトの顧客体験を向上するオンライン接客手法についてまとめた資料を公開しています。ぜひダウンロードしてご活用ください。

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リテンションマーケティングのやり方・方法

リテンションマーケティングを行うには具体的にどのような手順を踏めばよいのでしょうか。以下で説明しますので、実際にリテンションマーケティングを行う際の参考にしてください。

ステップ1:顧客のセグメント・分析を行う

最初に行いたいのは、自社の顧客に対する分析とセグメント分けです。顧客の年齢層や性別、地域などの分析と、購入頻度や1回あたりの購入金額、購入商品などによるグループ分けをします。

顧客の年齢層などによって、DMやSNSなど届きやすいアプローチ方法が変わってきます。また、購入商品や購入頻度を分析することで、「優良顧客」「休眠顧客」などのセグメントに分けられるでしょう。

「定期的にキャットフードを購入しているから、猫を飼っているだろう」「最近注文がないから、他社に乗り換えたかもしれない」といった、顧客の状況を推察することも大切です。

ステップ2:セグメントに合わせた施策を立案する

分析結果に応じて、顧客のセグメントに合わせた施策を考えます。実店舗の近くに住んでいる顧客にはオフラインマーケティングが有効でしょうし、アプリの休眠顧客にはプッシュ通知がよいでしょう。

自社の商品やサービス内容も考慮に入れつつ、顧客に届きやすい手段を考えます。また、アプローチ内容も顧客のセグメントごとに変化させましょう。「普段キャットフードを購入している顧客に、猫グッズのクーポンを送る」「休眠顧客にリピーター割引クーポンを送る」などが考えられます。

ステップ3:施策の実行と効果測定

施策を行ったら、その結果がどうであったのかを測定しなくてはなりません。様々な施策を実行し、比較していく中でより良いアプローチ方法にブラッシュアップできるからです。

測定に使う値としては、「リテンション率」「LTV」「クーポンやキャンペーンの利用者数」「メルマガの開封率」などがあります。リテンションマーケティングの目的に合わせ、比較する値を定めましょう。定期的に効果測定をし、施策を改善しましょう。

ステップ4:CRM(顧客関係管理)ツールを活用する

顧客のセグメント分けや施策の実行・効果測定を1つずつ人力で行うのは大変な作業です。効率化にはCRMツール(顧客関係管理ツール)を導入して管理するとよいでしょう。

CRMツールを使えば、顧客の氏名や連絡先、購入履歴や購入額が一括で管理・閲覧できます。例えば「初回購入の1週間後にフォローアップメールを送信する」「3か月間注文のない顧客をリストアップする」などの操作も簡単に行えます。

CRMツールを活用することで、リテンションマーケティングにかかる手間や時間を大幅に削減できるでしょう。

リテンションマーケティングの具体的施策

リテンションマーケティングの施策には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。以下で代表的なものを紹介しますので、目的や商品に合わせて使い分けましょう。組み合わせて使うことでより高い効果も期待できます。

1:メールマガジン・ニュースレター

定期的に発信するメールマガジンや、顧客にとって有益な情報を発信するニュースレターを使い、既存顧客に対して新商品や有益な情報を発信する施策です。CRMツールでも配信をサポートされていることが多く、セグメント分けや配信結果を反映しやすいでしょう。

すぐに購入を促したい場合はメールマガジンが、じっくり信頼関係を構築したい場合はニュースレターが向いています。購入後のフォローアップメールや資料請求後のステップメールと組み合わせ、顧客の状況に合わせてアプローチしましょう。

2:SNS

TwitterやInstagramなどを利用し、商品やサービスについての情報を発信していく施策です。不特定多数に向けた発信となるため、必ずしも既存顧客にのみアプローチできるとは限りませんが、ブランドストーリーなどの発信も行うことで新規顧客の獲得も同時に狙える点が魅力です。

DM機能や公式LINEへの誘導で、カスタマーサポート機能を持たせることもできます。お問い合わせ窓口や電話よりも、気軽に問い合わせが受けやすくなるでしょう。

3:オフライン

オフラインの施策とは、ワークショップやセミナーなどのイベントを開催し、企業と既存顧客が交流を行うことです。直接顧客と会い、その場で疑問点や質問に答えられ、より商品やサービスの魅力を伝えやすいでしょう。

顧客同士の交流も促進できます。ほかの施策より企業と顧客との距離が近く、ロイヤリティの向上にも役立ちます。

4:レコメンド

レコメンドとは、アプリやECサイトの利用者に対し、それまでの閲覧履歴や購入履歴から「おすすめ商品」を表示させることです。

すでに購入している商品の類似商品をおすすめすることでアップセルが、共に使うのに適した商品をおすすめすることでクロスセルが狙えます。アイテム数が多く単品の商品価格が比較的手頃な、ファッションや日用品などに適した手法です。

5:キャンペーン

お得なキャンペーンなどの情報を配信することで、休眠顧客の掘り起こしや積極的なサービス利用を促す施策です。キャンペーン内容により、積極的な商品購入やロイヤリティの向上を目的とすることもできます。

「キャンペーンを利用して終わり」ではなく、その後も継続してサービスの利用や取り引きを続けてもらえるような施策にする必要があります。

6:プッシュ通知

スマホの画面にメッセージ表示を出すプッシュ通知は、アプリの利用を目的とした施策として有用です。今行っているイベントやクーポンの配信を休眠顧客に向けて通知することで、アプリの再起動やそこからの購入を促します。メルマガのように開封しなくても表示され、ユーザーの目に触れやすいのが特徴です。

7:Web接客

ポップアップやチャットを用いて、サイトやアプリ上で接客を行うことをWeb接客と言います。

ユーザーの状況に合わせた条件を設定することで、シチュエーションに合わせた対応ができます。購入後もきめ細やかな接客があると顧客満足度も高まり、リピート利用につながります。

お気に入り機能や試着機能など、本来は便利なのにあまり使われていない機能がある場合は「ここをタップすると絞り込めます」のようなチュートリアルも有効です。便利な体験をしてもらうことで、リピート率やLTVの向上を期待できます。

8:カスタマーサクセス

カスタマーサクセスとは、顧客から疑問が出てくるのを待つのではなく、能動的に顧客に働きかけてサービスの効果的な使い方を提案していくことです。

定期的に顧客と接点をもち、困っていることや現在のサービス利用状況を聞くことで、より良いサービスの使い方をアドバイスします。信頼関係が構築でき、継続利用や継続契約が期待できるでしょう。

リテンション

リテンション施策により会員の予約完了率が115%に改善した事例

オンラインビジネス英会話のサブスクリプションサービスを提供しているビズメイツ株式会社では、既存顧客へのWeb接客を用いたリテンション施策により会員の予約完了率を上げることに成功しました。具体的な2つの施策内容を紹介します。

まず、会員登録したものの「英会話が怖い」「どう学習していいかわからない」という初心者向けに「初心者でも会話しやすいトレーナー」を案内しました。非表示のパターンと比較して、予約完了率が115%に改善されました。

また、最後の受講から次のログインまで1週間以上空いたユーザーに「おかえりなさい!」というメッセージとともに、どのレッスンから再開するかを選択肢で表示するという施策では、予約完了率は106〜108%に改善しました。

顧客のニーズや、サービスを利用していない理由など、顧客に関する深い洞察を得ることで、顧客ごとに最適なリテンションマーケティングを展開することができます。そうすることで、既存顧客との良好な関係を維持し、長期的なビジネス成功につなげられるでしょう。

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